全日本ラリー選手権第4戦 久万高原ラリー
開催日時:6月12~13日
開催場所:愛媛県上浮穴郡久万高原町美川スキー場周辺
スペシャルステージ本数:10本
スペシャルステージ総距離:105.76km
ラリー総距離:2デイ221.52km
SS路面:ターマック(舗装路)
SS路面状況:デイ1:ドライ、デイ2:ウェット
勝田範彦インプレッサが接戦を制し、今季3勝目
全日本ラリー選手権第4戦は、愛媛県久万高原町を舞台に前半戦最後のターマックラリーとして開催された。第3戦からのインターバルは3週間あったとはいえ、前戦は長距離グラベル。多くのクルーはこのラリーに向けて車両の仕様変更をし、慌しく準備を整えて現地入りしたであろう。また一方で、グラベル2戦をパスし、準備万端で望んだクルーもいた。第4戦のSS総距離は105.76km、ポイント係数は1.2となる。
ラリーは土曜日の早朝からレキ、夕方にスタートしてデイ1のSS4本を走行、オーバーナイトパルクフェルメを挟んでデイ2はSS6本を走行する設定だ。久万高原地方は週半ばからの好天ですっかりドライコンディションになっていたが、天気予報によれば週末に向けて梅雨前線が北上しており、日曜日は朝から確実に雨が降るだろうと予想された。
JN4クラスは10台のエントリー。ターマックを得意とする榊雅広ランサーエボ10、松岡孝典インプレッサGRBは第1戦以来の出場となる。デイ1は3.56kmの「神岡」と5.80kmの「大谷」、比較的短いSS2本を2回ずつ、計18.72kmを走行した。コンディションはドライ。SS1「神岡」で最初のベストタイムを出したのは前戦を圧倒的なスピードで制した奴田原ランサーエボXだった。それに勝田範彦インプレッサGRB、福永修ランサーエボXが続いた。SS2は「大谷」。ここも奴田原がリードし、勝田が続く。また、松岡、高山仁ランサーエボVIIら若手もトップ集団にきっちり付いて行く好タイムを並べた。SS3はSS1の再走、ここも奴田原が取り、それに続いたのは高山と松岡だった。SS4はここまでやや不本意なタイムに甘んじていた石田正史ランサーエボXがようやくベストタイム。結局、デイ1は奴田原が1位、5.0秒差で勝田、更に2.5秒差で松岡、その直後に福永、石田、高山がコンマ差で並んで終了した。翌日の天気予報は雨、SSはまだ90km近く残っており、この時点での5秒や10秒の差は無いようなものだと誰もが思っていたはずだ。
明けてデイ2、天気は予報どおり本降りの雨となった。デイ2は4.98kmの「大谷リバース」、全日本ラリー選手権のターマックSSで最長となる24.38kmの「美川リバース」、最高地点で標高1500mにも達する14.16kmの「大川嶺」の3本を2回ずつ走行する。この日最初となるSS5「大谷リバース」で早くも上位陣に波乱が起きた。3番手スタートだった松岡がコースアウト、木をなぎ倒しながらコース上に復帰しSSを走りきりはしたが、ここでリタイアしてしまった。このSSは奴田原が昨日からの好調ぶりを維持するベストタイムで勝田との差を3.2秒広げ、8.3秒とした。3番手以降は松岡がコース上に出した木の影響もあり、タイムが伸びない。続くSS6「美川リバース」、本降りの雨は霧雨に落ち着いたが、代わってコースの一部は霧に包まれた。ここで勝田はわずか3秒ながら奴田原を上回り、このラリー初のトップタイム。後方では3位グループにいた福永がコース脇の側溝に捕まり、リタイア。また、デイ1を好位置で折り返した高山は「特に何もしていない」にもかかわらず、このSSだけで同じ3番手を争う石田や榊に40秒以上の差をつけられ、難コンディションに苦戦していたようだ。1ループ目の最後となるSS7、前半に急勾配のヘアピンコーナーが連続するこのコースで勝田は奴田原を6.3秒上回り、とうとう奴田原を1.2秒逆転し、ラリーリーダーに立った。
2ループ目も天候は相変わらずの霧雨、しかしSS路面は1周目ほどのウェットではない。SS6 の再走となるSS8では勝田が奴田原をわずかに上回ったが、差はまだ1.6秒に過ぎない。”最長コース”「美川リバース」の2回目となるSS9、勝田、奴田原ともに渾身のアタックを見せた。ここで勝田はスピンしマシンの後ろをクラッシュながらも奴田原を10.1秒も上回るタイムで走りきり、勝利をほとんど決定的なものとした。最終SS10も勝田の勢いは止まらない。標高の高い部分は濃霧となったこのSSは、勝田が13.1秒差の完璧なベストタイムで奴田原を突き放し、今季3勝目に花を添えた。2位は奴田原。3位は確実に走りきった石田がものにした。
JN3クラスは14台のエントリーがあったが出走は13台、今回は舗装ということもあり、バラエティに富んだ車種構成となった。SS1から3までは眞貝知志インテグラが3本連続でベストタイムを奪い、トップに立つ。SS4では排気量1600ccのレビンを駆る高橋悟志がベスト、結局デイ1終了時点ではトップ眞貝、2番手には0.9秒差で高橋、6位までがトップから10秒以内と混戦模様だ。デイ2、最初のSS5では眞貝が高橋を5kmで8.6秒も上回るベストタイムを出し、ラリーが動き始めた。このSSでは先頭グループにいた曽根崇仁セリカがコースアウト、リタイア。明治慎太郎スターレットは走り続けてはいるがマシントラブルで大きく遅れた。SS6美川リバースでも眞貝が高橋を13.8秒上回るタイムで差を広げる。続くSS7も眞貝が高橋を9.8秒上回り、結局この3本のSSで差を33.1秒にまで広げ、勝負を決めてしまった。残る3本も眞貝が2本のベストで着実に差を広げ、今季2勝目を手にした。2位は高橋、3位には香川秀樹インテグラが入った。
JN2クラスは6台のエントリー。前戦優勝の天野智之ヴィッツはSS1から速さを見せ、デイ1終了時には2番手の青島巧フィットに18.5秒差をつけていた。デイ2最初のSS5、雨の下りで速さを見せる青島がここで天野を9.9秒上回るベストタイムを出し、8.6秒差まで追い上げた。しかし続くSS6、今度は天野が青島を43.1秒も上回るタイムを叩き出し、一気に独走態勢に入った。結局青島はSS8でのコースアウトが元でリタイア。天野は2位に上がった村田康介デミオに1分半以上の差で、第3戦に続く2勝目となった。
JN1クラスは5台のエントリー。昨年のJN1チャンピオン西山敏がマシンをマーチに変え、今季初めて顔をみせた。ラリーはこの西山と中西昌人ストーリアを中心に展開した。西山はデイ1で4連続ベストタイムを刻み、2位中西に17.7秒差をつけた。さらにSS6、西山が中西を33.0秒上回るベストタイム。中西は2ループ目となるSS8以降3SS連続ベストで反撃を試みるが、すでに西山のリードは大きく、西山がニューマシンで今季初優勝を決めた。
テキスト:JRCA