全日本ラリー選手権第3戦 ラリー北海道
5月21~23日 北海道十勝地方
スペシャルステージ本数:18本
スペシャルステージ総距離:220.97km
ラリー総距離:2デイ約928.39km
SS路面:オールグラベル
SS路面状況:デイ1:ほぼ全面ドライ、セクション4のみウェット
デイ2:セクション6で一部ウェット、セクション7はドライ
奴田原文雄ランサーが圧巻のタイムで今季1勝目
第2戦から実質1週間余の短いインターバルで全日本ラリー選手権は北海道十勝地方で開催される第3戦「Rally Hokkaido」を迎えた。この1戦はFIAアジアパシフィック選手権と併催されており、国際色豊かなサービスパークの風景が国際ラリーならではの華やかさを演出する。一方で総SS距離200km超、SSによってはトップの平均速度が100km/hを軽く超えるハイスピードでダイナミックなステージに選手はこれまで以上に的確なスピードコントロールやペースノートワーク、クルーのコンビネーションなどを要求される。ポイント係数は最大となる2.5。各チームとも落とせない1戦として十勝入りしたはずだ。
レキが行われた木曜日はほぼ1日中雨、金曜日も足寄・陸別がある北十勝地方は夕方に雨が降った。また林道ステージの標高の高い部分は最近まで雪が残っており、その影響もあって路面は水分を含み、ウェットではないものの例年よりも柔らかく、荒れやすい路面となった。
JN4クラスは16台のエントリー。レギュラー陣に加え、出場すれば速いベテランの大嶋治夫ランサーエボ9、岩下英一ランサーエボ9らが参戦してきた。金曜日の夜、セレモニアルスタートに引き続き行われたデイ1a、SS1「オビヒロ」、顔見せ的なこのステージはまず奴田原文雄ランサーエボ10がたった1.2kmの特設ステージで2番手の岩下を2秒離す1分01秒台で走り、好調さをうかがわせた。
明けて土曜日のデイ1bは林道ステージから始まった。セクション2、SS2は25.12kmの「シピリカキム・リバース」。奴田原はここで2番手大嶋を24.8秒も上回るタイムでフィニッシュ、更にSS3「クンネイワ・リバース」25.25kmでも2番手の石田正史ランサーエボ10を25.7秒上回り、たった3本のSSですでに総合2番手の石田に対し1分近いマージンを築いてしまった。このSS3のタイムは全日本車両よりも1mm大きい内径33mmのリストリクターを装着できるアジパシ勢のトップ、新井敏弘のタイムを3秒も上回る驚異的なタイムだ。これによりSS4「リクベツ」2.73kmを終了した時点で岩下、石田、勝田範彦インプレッサGRBの2番手グループとの差は早くも約1分25秒となった。
セクション2と同じ構成となるセクション3は、奴田原が更に他を圧倒するトップタイムを刻み続け、このセクションが終わる頃には2番手の石田との差はすでに2分を越えた。
続くセクション4は3ループ目となる林道ステージ2本を走行後、北愛国に戻り「オビヒロ」を2本走る構成。このセクションの前から林道ステージではにわか雨が降り、所によりウェット路面となった。奴田原は若干ペースダウンし、SS9では石田がこのラリー初めてトップタイムを出す。しかし奴田原も遅れることはなく、2分余りの差を着実にキープしながら北愛国に戻った。SS10 、SS11「オビヒロ」
では奴田原と石田が1本ずつ獲ったが、結局、奴田原が全11本中9本のSSでトップタイムを出し、2位の石田に160.17kmで2分10秒9の差をつけ、デイ1を終えた。
翌デイ2のラリーコースはスタート前の早朝から霧雨が降る天候となった。この日は短かめの3本のステージを2本ずつ走り、最後に「オビヒロ」を走ってフィニッシュとなる。この日、奴田原はベストタイムこそ半分以下の3本にとどまったが、全てのステージで堅実に上位3台に入るタイムを刻み続け、最終的に2位石田と2分06秒2もの差をつけた磐石のラリー運びで今シーズン1勝目を上げた。
JN4クラスの2位、3位争いは全クラスの中でもっとも競ったものとなった。石田は勝田に対し何度もマージンを築きかけるが、石田自身のトラブルもあり、なかなか引き離すことができない。デイ1を終えた時点で2位石田と3位勝田の差はたったの13.6秒だった。デイ2最初のSS12「オトフケ」6.29km、勝田は石田との差を11.3秒に縮めた。しかし次のSS13「アショロ」12.73km、序盤から中盤にかけての約3分の2が深い霧で覆われた超ハイスピードコースで勝負に出た石田は、2番手の勝田に6.3秒差を付けてここを走りきり、トータルの差を17.6秒とする。SS14「ホンベツ」10.78kmでは勝田がこのラリー初のトップタイム。しかし石田も一歩も譲らず、SS12の再走となるSS16で再びトップタイムを出し、差を21.4秒に広げた。SS17、勝田は車両のトラブルもあってついに勝負から降り、一方の石田はこの日3本目のトップタイムでダメを押し、今シーズン初完走を2位入賞で飾った。3位には勝田が入った。
JN3クラスは9台のエントリー。第2戦優勝の香川秀樹インテグラ、昨年のラリー北海道JN2クラス優勝の田中伸幸ミラージュ、レギュラーの曽根崇仁セリカらに加え、2002年四輪駆動部門Bクラスチャンピオンで地元の鎌田恭輔が久々にミラージュで参戦してきた。最初に優勝争いから脱落したのはまたも曽根だった。SS3でブレーキにトラブルを抱え、SS4をなんとか走行してサービスを受け、再び戦列に戻るも、2ループ目で荒れた路面となったSS5で駆動系にトラブルが発生し、リタイア。このSS5では更に香川もサスペンションにトラブルを抱えてしまう。続くSS6、香川のマシンはとうとう走行不能となり、リタイアとなった。1位田中とそれを追う2番手鎌田との差は北愛国に戻った時点で約1分。このオビヒロで鎌田は田中を追うのをあきらめ、確実に2位を狙う作戦に切り替えたと言う。しかしデイ1最終のSS11、鎌田のミラージュは駆動系が突然壊れてスタートできず、リタイアとなってしまった。これで田中は完全な一人旅となり、デイ2は荒れた路面にマシンをいたわりつつ着実に走りきり、今シーズン1勝目を挙げた。2位には「セクション2で足回りにトラブルを抱えて以来、確実に完走を狙う走りに切り替えた」という若槻幸治郎パルサー、3位には慎重に走った筒井克彦ミラージュが入った。
JN2クラスは7台のエントリー。天野智之ヴィッツ、鷲尾俊一スイフトのレギュラーにヴィッツラリー勢とデミオ2台、そして地元でハイスピード林道を得意とする和田誠ヴィッツが挑む形となった。最初のロングステージとなるSS2、トップタイムを奪ったのは地元の和田だった。天野は4秒差の2番手、3番手以下とはこの1本で30秒以上の差が開いており、ラリーはこの2台の勝負になっていくものと思われた。しかし続くSS3、伏兵の登場で気を引き締めた天野に対し、和田は約3分の2を走った所でバーストを喫し、この1本で天野に1分30秒近い差となる。天野は自身もSS6で前走車に追いつき大きくタイムを落としたが、終始トップを保ち、今シーズン1勝目を挙げた。JN1クラスは成立しなかった。
同時開催されたFIAアジアパシフィック選手権では、田口勝彦がアジパシ登録ドライバーの優勝、新井敏弘が終始トップでラリー北海道の総合優勝を飾った。
<優勝者のコメント>
●JN4優勝ドライバー 奴田原文雄
今回はSS2と3を3回使うということで、1周目でがんばってみた。アジパシが先に走って砂利を飛ばしてくれるので、1周目は走りやすかった。2周目以降はどんどん荒れて来るのでタイムアップが望めなく、車も壊さないようにしないといけない。アジパシ選手や新井選手のタイムと比較してどのくらい行けるのか見てみたかった。今年は1戦目はターボトラブルでリタイアし、2戦目も上手くいかなかったことがあったので、ここでかなり挽回できて、中盤から後半につなげることができると思う。一番好きなステージはスピードの出るクンネイワ。路面が良ければもっと良いと思う。一番の理由はSS3で新井選手に勝ったことかな。たぶん悔しがっていると思うよ。
●JN3優勝ドライバー 田中伸幸
車が壊れるので、壊さないようにと考えて1本目は抑えて走った。ミラージュにはきついジャンプが続く。皆は飛んだが、僕は車をいたわって飛ばなかった。今日は守りの走りです。今後はダートはなるべく出たいと思う。一番好きなステージは路面は良くないがクンネイワ。
●JN3優勝コドライバー 遠山裕美子
ラリーはこういう戦い方もあるんだと思った。前半の遅れはそれほど気になっていなかった。
●JN2優勝ドライバー 天野智之
ひむかが終わってからダンパーの仕様を変えてもらい、なんとか木曜日には車に付けることが出来た。最初は様子を見ながら走ったが、結構行ってもいいという感じになってきた。おかげさまで完走することができました。展開としてはリードできると思っていたら和田選手が結構いいタイムで走った。タイヤはウェットタイヤで全部やろうと思っていて、バーストが心配なので気をつけて走ろうと思っていたら微妙なタイム差で、どこまで攻めていいのか少し悩んだ。一番好きなステージはクンネイワ。ギアが低すぎてスピードが頭打ちになってしまったのが残念。
●JN2優勝コドライバー 井上裕紀子
とにかく完走第一で成績は考えていなかったが、できれば1位と思っていたので優勝できて非常にうれしい。ドライバーに負担をかけることもあったが、何とか挽回できて良かった。
テキスト:JRCA