全日本ラリー選手権第1戦 ツールド・九州2010 in 唐津

High Performance Brakes

全日本ラリー選手権第1戦 ツールド・九州2010 in 唐津

全日本ラリー選手権第1戦 ツールド・九州2010 in 唐津

4月10~11日 佐賀県唐津市

スペシャルステージ本数:22本

スペシャルステージ総距離:101.19km

ラリー総距離:2デイ約500km

SS路面:オールターマック

SS路面状況:DAY1 ドライ、DAY2 ウエット

 

勝田範彦インプレッサが唐津5連覇?

 今年の唐津はSS総距離が昨年までの60km程から一気に係数1.2となる100km超に延ばされた。一方で、ここ数年設定されていた10km超のSSは姿を消し、最も長いSSが7.56km。この林道の往復以外は全て5km以下だ。短いSSをタイトなリエゾンでつないで合計22本をこなす設定となっている。SS総距離が延ばされたことによりタイヤの総本数規制は昨年より2本多い12本となったが、気まぐれに変わる天気とタイトなリエゾンが相まって、各チームともタイヤ戦略に頭を悩ませるラリー展開となった。

 デイ1の天候は曇りのち晴れ。晴れればこの時期でもかなり暑くなるが、路面は金曜日の小雨の影響が残り、1ループ目のSSはあちこちに湿った路面が残るコンディションとなった。セクション1は8SS、37.62kmを走る。今年の勢力図を占う上で注目の7.41kmのSS1、ここをトップでフィニッシュしたのは唐津4連勝中の勝田範彦GRBだった。わずか0.2秒差の2位にはキャロッセのランサーEvo10を得た「七山エンペラー」榊雅広、勝田から2秒後の3位には昨年のチャンピオン奴田原文雄Evo10がつけた。奴田原から約2秒後には地元の吉谷久俊ランサーEvo8、若手注目株の1人である高山仁Evo7、そして今年こそチャンピオンをという決意で望む石田正史ランサーEvo10が並ぶオーダー。この6台を中心に今回のラリーの上位争いが展開されていくことが予想された。

 続くSS2は石田、SS3は奴田原がベストタイム。優勝候補の1人である榊もベストこそ無いものの、各SSを好タイムでまとめ、この時点で勝田と榊が同タイムの1位、以下奴田原、石田、吉谷、高山のオーダー。しかし次のSS4で、最初の波乱が起きた。あろうことか榊がバーストにより1分以上のロス、優勝争いから脱落してしまったのだ。SS5からSS8は奴田原が4本連続でベストタイムを刻み、セクション1を勝田に4秒差をつけてトップで終了し、サービスに戻ってきた。一方、トップとの差を維持しながら3位につけていた石田はSS6から徐々に遅れ始め、SS8の途中でとうとう過給を失い、最初のサービスでリタイアしてしまった。

 サービスをはさんでセクション2は8SS、38.19kmを走る設定。SS9、勝田が追い上げる中、奴田原のタイムが伸びない。勝田が1秒差に迫るSS10、今度は奴田原のマシンが音を上げる。SS10で30秒、SS11で25秒のビハインドを背負い、とうとう奴田原までリタイアを決めてしまった。SS12、勝田を止める者はもういない。2位に約30秒と、彼の実力からすれば充分すぎるマージンをもらい、勝田はその差をクレバーに維持しながら2日間を走りきり、開幕戦5連勝を決めることとなった。

 一方、石田、奴田原のリタイアと榊のトラブルで空席となった2位、3位争いは熾烈なものとなった。奴田原が姿を消したSS12、2位高山、3位吉谷そしてセクション2に入ってから急に速さを増した松岡孝典GRBまでの差はわずかに1.6秒。5位古谷哲也ランサーEvo10までの差も6秒ほどだ。ここからセクション2の間中、高山と松岡は時に勝田をしのぐ好タイムをマークしながら切迫した2位争いを繰り広げる。ここまで好調だった吉谷はこの2台の争いにすっかり置いていかれた形だ。デイ1終了時のオーダーは、2位高山、2.7秒差の3位に松岡、4位吉谷はすでに11.2秒の差をつけられ、むしろ5位の古谷とグループを形成する気配さえうかがえた。

 明けてデイ2、朝方の雨の影響で路面はウェット。ここで吉谷が勢いを取り戻した。ベストタイムこそ1本にとどまるものの、確実に上位のタイムを刻み続け、深い霧の出たSS19では高山と松岡を一気にかわし、2番手に上がる。吉谷はその後も好タイムを並べ、2位でフィニッシュした。3位争いは松岡と高山の一騎打ちとなった。高山は霧のSS19で松岡を逆転し、このSSのリピートとなったSS21でさらにダメを押し、松岡に13.7秒の差をつけて3位のタイムでフィニッシュしたはずだった。しかし、高山にとって事はそう簡単には進まない。高山には結局TC9の2分遅着による20秒のペナルティが確定し、松岡が逆転3位となった。

 昨年のJN3とJN2を統合して新設された新JN3クラス、このクラスには全クラス中最多の18台がエントリーした。車種は10種以上、駆動方式もFF、MR、FRとバラエティに富み、盛り上がりが感じられる。まずSS1をベストタイムで走ったのは今年の”めろんちゃん”こと眞貝知志インテグラ。SS2は松本琢史ロータス、SS3は地元の筒井克彦S2000がとり、それに曽根崇仁セリカ、岡田孝一セリカ、昨年のJN1で2勝を挙げた明治慎太郎スターレットらが一団を形成する形だ。

 最初にラリーが動いたのはSS7、ここで曽根がエンジントラブルによりリタイア、そしてSS9ではSS5以降4連続ベストタイムでじりじりとリードを広げつつあった筒井がリタイアしてしまった。この時点でトップ松本と2位眞貝のタイム差は14秒。しかし眞貝は松本の独走を許さない。同じ林道を走るSS10、12、14の3SSだけで松本との差を11.2秒も詰め、デイ1を1位松本、3.8秒差の2位に眞貝というオーダーで終了した。デイ2最初のSSとなるSS17、「ウェットタイヤを使うためにデイ1を我慢した」という眞貝は松本を7.9秒も上回る総合5番手のタイムで走り、とうとう松本を捉えた。眞貝はその後も快走し、結局松本に10秒以上の差をつけて新JN3クラス初ウィナーとなった。2位には松本、3位には岡田が入った。

 旧JN1.5をそのまま名称変更した新JN2クラスは、6台のエントリー。丹羽和彦フィットが全22SS中21回のベストタイムと別格の速さを見せ、2位天野智之ヴィッツに約2分15秒もの圧倒的な差をつけて優勝した。丹羽のタイムは総合でも13番手、JN3クラスの上位に匹敵するものだ。

 今年から新規登録10年以内のRF車両クラスとなったJN1は5台のエントリーがあり、中西昌人ストーリアが独走し、優勝した。

 

<優勝者のコメント>

●JN4優勝ドライバー 勝田範彦

「コドラと全日本で組むのは初めてでしたが、予想以上の働きをしてくれてよかった。タイヤ交換も多かったが、来る前に何度と無く練習してくれるなどがんばってくれて、今回は本当に上手く行ったと思います。まだ緒戦なので課題点はこれから徐々にクリアにしていきたいと思う。まず一勝ということでうれしかったです。今回はタイヤのマネジメントが勝負どころだったと思う。」

 

 

●JN4優勝コドライバー 足立さやか

「お疲れ様でした。今回は大きな車も初めて、車にかかるGも大きく感じていましたが、日々の筋トレが生かされたと思います。」

 

●JN3優勝ドライバー 真貝知志

「去年の5月の京都で車を全損にし、転職・転居などもあったが、ラリーの無い生活は考えられないと思い、今年に入ってから毎週神奈川と愛知を往復して車を仕上げました。時間が無く、車はかなり暫定で、1日目の昼間はなかなかタイムが出ずに苦しんだ。勝負どころは1日目の後の雨乞い。朝起きたら予想通りの雨で、FFが少しでも有利な状況になってくれたので、そこをきっちり出さなきゃいけないなということで運転して、なんとかとれたかなというところです。天気予報で雨になりそうだったので、1日目に急遽タイヤを温存し、2日目はウェットタイヤを4本使えたのが良かった。霧のSSではノートの精度の甘さを感じた。」

 

●JN2優勝ドライバー 丹羽和彦

「勝負どころはSS1、21、22。SS1では、車が出来上がったばかりで、どういうことになっているか判らない状態で走り、タイムのマージンがあったのでこれだったらなんとかなるんじゃないかと思った。あとは調子よく走れた。SS21、22を挙げた理由は1600ccに勝ちたかったからです。雨はかなり嫌だった。今でも車にちょっと違和感が残っているが、結果的にはタイヤが良かったのでその心配は無く走れた。今シーズン、他の全日本戦に出る予定はありません。」

JN2優勝コドライバー 藤田めぐみ

「ドライバーと組むのもほとんど初めて、小さい車も初めてだった。自分の体が大きいので、それが負担にならないか心配だったが、一生懸命がんばりました。」

 

●JN1優勝ドライバー 中西昌人

「無事成立してよかった。ターマックの全日本は久しぶりで、車も初めてだし、コドラも通して組んだのは初めて。その辺の不安はありました。1本目を無難に走れ、2本目からは感覚を取り戻した。序盤に引き離しができて、今日は完走ペースで走れた。JN1は台数も少なく厳しい状態ではあるが、出やすい状況を作ってもらったので、これからも成立できるように、舗装についてはほぼ全戦出たい。」

 

●JN1優勝コドライバー 北川紗衣

「中西さんと組んだのは今回を含めて3回目。次回、次々回とノートが合ってきた時に中西さんが上位クラスのタイムを食えるようにサポートしていきたい。次回からまた中西さんのタイムをみてほしい。」

テキスト:JRCA